作品紹介:双子のパラドクス総集編

『双子のパラドクス総集編』 嵐田源二著
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A5 表紙込76ページ (推定127 グラム) 末端価格600円(税抜)
ISBN 978-4-87310-022-7(C0042)  在庫:246冊
相対性理論は、物理学の用語としては最もその名が知られたものではないかと思う。有名になった理由は、SFの小道具としてよく使われるからだと私は考えている。宇宙ものや時間旅行もののSFでは、「相対性理論」という言葉は魔法の言葉であって、「相対性理論によると」とか「相対性理論によれば」と言えば、高尚な理論に裏付けられた高度な内容のSFであるかのような幻想を抱かせる。しかし、「相対性理論」という言葉は聞いたことはあるが、その中身となるとよく分からないという人も多いだろう。実のところ、中身は分からない方がSFとしては都合がよい。相対性理論の中身が分かってしまうと、SFの内容が科学的に正しくないことが明らかになってしまうものがかなりあると思われるからである。もちろん、世の中には相対性理論をまじめに学んでいる人もいるし、相対性理論の啓蒙書もたくさん出されている。相対性理論を理解している人もそれなりにいると思う。であるにもかかわらず、である。であるにもかかわらず、私の知りたいことに答えたものには、お目にかかったことがない。私が知りたいことは単純明快で、地球を出発した宇宙船が宇宙旅行をして地球に帰ってきたとき、宇宙船の中の時間はどれだけ経っているか、ということである。ただこれだけのことなのだが、これに対する明快な回答は見たことがなかった。条件を単純にした場合の計算はそれほど難しくはない。例えば、地球を出発した瞬間に光速の90%の速さに達した宇宙船の運動を考えるとか、である。その場合は、特殊相対性理論で有名な時間の遅れの式を使って簡単に計算できる。だがそれではあまりにも現実的ではない。実際の宇宙船は、初めに加速度運動をして徐々に速度を上げていくものである。その間の時間の遅れはどうなるのか。そういうことをきちんと数式を立てて計算したものは、ほとんどない。宇宙船が行って帰ってきたらどうなるか、までを計算しているものに至っては、見たことがない。そこで、である。そこで私は自分で計算することにしたのである。それが、私がこの本を書く出発点となった。
宇宙旅行をして帰ってきたら宇宙船の時間が遅れていた、というのは、ウラシマ効果として知られている。私が知りたかったことは、ウラシマ効果を計算で求めることであった。だがもう1つ、解明したいことがあった。それは双子のパラドクスの問題である。相対性理論によると、高速で移動する物体の時間は遅れることが導かれる。地球から見れば宇宙船が高速で移動しているので、宇宙船の中の時間が遅れる。一方、宇宙船から見れば地球が高速で動いているのであるから、地球の時間が遅れることになる。そしてそれは、相対性理論の考え方によると正しいのである。つまり、お互いに相手の時間が遅れるのである。それはそれで奇妙なことではあるが、宇宙船が二度と地球に戻らないならば、それはそれで認めてしまっても問題は起きない。しかし、宇宙船が地球に戻るとなれば、地球に戻った時の時間はどうなのかが問題になる。ウラシマ効果を計算するならば、この問題も避けては通れない。そして、この問題に対する回答を示すことが、この本の内容となっている。
最初、双子のパラドクスの問題は一般相対性理論を用いて解くことを考えていた。そのため、加速度系での計量テンソルを求めなければならないのだが、さらにそのためには、慣性系と加速度系の間の座標変換式を求めなければならない。そして慣性系と加速度系の間の座標変換式を求めたのであるが、そこに至って、はたと気づいたのである。この座標変換式さえあれば、一般相対性理論を使わなくても双子のパラドクスの問題を解くことができる。ならば、まず、この座標変換式で双子のパラドクスの問題を解いてみよう。そう思って書いたのが「双子のパラドクスの定量計算」であった。
続けて、一般相対性理論を用いた解法に取り掛かった。初めは何も問題なく解けるものだと考えていたのだが、妙な問題にぶつかった。予想した結果と異なる結果が得られたのである。初めは計算を間違えたのか、何か条件が足りないのか、色々考えたのだが、最終的にその計算は正しいと思うようになった。その妙な問題とは、加速度運動している宇宙船の長さが伸びてくるという問題であった。この時は気づかなかったのだが、これがのちに、ローレンツ収縮についての考察へとつながっていく。
最後に求めたのは、宇宙船がUターンをして帰ってくる場合の座標変換式であった。そしてこのときは、地球から見た宇宙船の飛行時間や目的地までの距離を具体的に設定して、宇宙船が地球に帰ってきた時の宇宙船での時間を具体的に求めてみた。それこそが私が知りたかったことだからである。計算式も載せてあるので、興味のある人は自分で条件を設定して計算してみるとよい。
なお、このシリーズの読み方は以下の順が推奨である。
  1. こう見えて相対論
  2. 双子のパラドクスの定量計算総集編(本書)
  3. ローレンツ収縮についての考察
  4. 一般相対論的運動方程式の導出
  5. Diracのγ行列と相対性理論

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